映画『二十代の夏』 高野徹監督インタビュー(後編)

11/5(土)神戸映画資料館での『二十代の夏』上映会に先駆けて、高野徹監督にインタビューをさせていただきました。本日はその後編です。高野監督ご自身のお話を中心に、自主映画制作や助監督の仕事についても答えていただきました。

──自主映画ならではの苦労はありますか?

お金がないって言うのと、あとは撮影の協力をお願いしたい人にも少し不審がられてなかなか受け入れてもらえないというのはありますかね。

その一方で自主映画には、時間をかけられるという良さがあります。今回15日間かけて撮影して42分の映画を作ったのですけれど、普通の商業映画だとおそらくスローペースすぎだと怒られてしまって、次に映画を撮れなくなるかもしれません。編集には丸一年かかったのですが、なかなかそのようなことも許されないだろうなと思います。

──映画監督になろうと思ったきっかけは何ですか?

高校3年生の時に文化祭の出し物として自主映画を撮ったことがきっかけですね。見よう見まねで試行錯誤しながら撮ったのですが、出来上がったものをお客さんに観ていただいたときに、とても喜んでもらえたんです。コメディ映画だったのですが、ここで笑うんじゃないかなと思ったところでお客さんがどっと笑った時など本当に嬉しくて、感激しましたね。

クラスの同級生たちと映画を撮ったのですが、僕が面白いなと思ったことでも相手は、いやそんなの面白くない、こっちのほうが面白いと。でも僕はそれが全然面白いと思えなくて。他者と分かり合うのはこんなに難しいんだなということを、そこで初めて知りました。

ただ同時に、努力すれば少しは分かり合えることもできるのだと映画を作りながら実感できました。これって面白いことだなと思い、映画制作に夢中になって、のめり込んでいきました。

──第29回の東京国際映画祭でオールナイト上映も行われた映画『ハッピーアワー』では助監督をつとめられていましたが、助監督のお仕事とは?

一般的に助監督の仕事とは、監督が演出に専念できるように準備をすることだと思います。

例えば撮影スケジュールの制作や衣裳・美術の管理などがわかりやすい仕事かもしれません。また何か演出をしようと思うと色々な部署との連携が必要になります。撮影現場で突然あれしたい、これないの?と監督に言い出されても準備していなければ対応できません。なので、事前に監督の演出意図を汲み取って他部署と調整するような橋渡し役にもなります。

今言ったような動きを何でするのかというと、限られた予算の中で効率的に撮影する必要があるからです。撮影日数が延びればその分お金、特に人件費がかかってしまうんですね。なるべく最小限で効率的に映画を作るにはどうしたらいいかを先人たちが考え、このような助監督の動きができあがったのだと思います。

『ハッピーアワー』は全く別の次元にあって、あまり効率や人件費ということは考えずに納得するまで準備して撮りたいものを撮るというスタンスでした。本当にゆっくりと物事が進行していました。スタッフが濱口監督含め基本5人くらいだったので、分業というよりかは共有しながら何でもみんなでやる!という感じでしたね。本来は制作部や美術部が行うことをしたり、撮影助手ばりにピント送りをやってみたり…色んなサポートを行っていました。

──今回神戸で上映会を開催するのも、そのご縁があってでしょうか?

そうですね。僕も神戸で半年過ごして、とってもいい町だなと思ったんです。食べ物は美味しいし、町を歩いている女性も綺麗だし(笑)。あと映画やアートに対して開かれているというか、受け入れてくれる町だなというのが感じられて素敵な所だなと思いました。

それと、僕が『二十代の夏』を制作するにあたって、クラウドファンディングで皆さんから資金を募ったのですが、その中で『ハッピーアワー』の出演者の方たちや、神戸の撮影でお世話になった方たちが、かなり支援をしてくださいました。そういう理由もあって、今回は神戸映画資料館をお借りして、上映会を開催することに決めました。

──最後にこれから映画を観られる方にメッセージをいただければ。

この映画は伊豆大島で撮影をしましたが、神戸の方に応援していただいて出来た映画です。お世話になった神戸の方、大好きな神戸の町の方に観ていただきたいとずっと思っていて、今回上映することが叶いました。このインタビューや予告編を観て少しでも面白そうだなと思った方はぜひ観にきてもらいたいです。


高野監督の想いが詰まった『二十代の夏』、ぜひ観ていただきたいです。

11月5日(土)15時から神戸映画資料館にて上映会開催!『ハッピーアワー』の共同脚本を担当された野原位監督とのトークショーもございます。

(yumiko)


■PROFILE

監督・高野徹

1988年生まれ。横浜国立大学大学院都市イノベーション学府修了。2010年に監督した『濡れるのは恋人たちだけではない』が、SKIPシティ国際Dシネマ映画祭や北京獨立電影展など、国内外の映画祭に出品され高い評価を得る。濱口竜介監督作品『ハッピーアワー』では助監督を務める。

■『二十代の夏』公式サイト | http://summer20s.tumblr.com/

■『二十代の夏』 Facebook | https://www.facebook.com/filmoshima/

■『二十代の夏』 Twitter | https://twitter.com/filmoshima

映画チア部

神戸・元町映画館を拠点に関西のミニシアターの魅力を伝えるべく結成された、学生による学生のための映画宣伝隊。