vol.4 株式会社 日宣 戸羽 大吾さん
「映画人の話を聞こう。」
映画チア部のメンバーが、映画業界で働く大人にインタビュー。
仕事内容だけでなく、仕事に対する想いやこれまでの道のりなど、
その人自身について深く掘り下げてお話を伺います。
第4回目は、広告代理店である株式会社 日宣さんで関西の映画宣伝のお仕事をされている戸羽 大吾さんにお話を伺いました。どのように、そのお仕事に就くことになったのか、あの作品の宣伝事情とは?? 映画宣伝だけではなく、宣伝のお仕事全般に興味のある方、必見です!
本日はどうぞよろしくお願いします!まず、戸羽さんが勤めていらっしゃる日宣という会社について、そこで戸羽さんがされているお仕事について教えてください。
僕が勤めている日宣という会社は広告代理店なんです。僕はそこで映画宣伝の仕事をしています。日宣という会社としては映画宣伝だけが主要な業務というわけではないのですが、昔から映画会社の方々とは繋がりがあります。各配給会社さん、もちろん大手の東宝さん、松竹さん、東映さんから、洋画を配給する会社ならディズニーさん、ワーナーさんなどです。各配給会社さんにお伺いをして、看板業務やイベントをお手伝いして、そういった業務をいただくことで会社が成り立っています。
その中で僕は今KADOKAWA映画さんや、キノフィルムズさん、ANIPLEXさんなどの配給会社さんと直接お話をしながら宣伝業務をやらせてもらっています。ただ、日宣が各配給会社さんの関西支社っていうわけではないんです。あくまで僕は日宣の社員であり、他の会社さんからうちに委託をしてもらって、業務をやらせてもらっている形になります。
日宣さんに入られてから、映画宣伝以外のお仕事をされたことはあるんですか?
日宣は広告代理店なので色々広告を扱います。その中でテレビやラジオでのスポット、屋外広告とか劇場の中に入っている看板などを、配給さんに持っていって買ってもらうんです。その中でテレビ広告などの仕事、例えば配給さんから「このテレビ局にCMを打ちたい」というご相談を受けて、その局にお話を持っていって、予算などを聞いて、どの番組にスポットを引きたいかっていう折衝をしたり、という仕事はさせてもらっています。
そもそも、どうして日宣さんに入ることになったのですか?
皆さんもそうだと思うのですが、もともと映画に興味がありました。映画が好きでよく観ていたので、映画のことをやりたいっていうのはずっとあって。僕はあまり真面目に就活をしなかったのですが、映画業界に入っていくにはどうしたらいいのかなというのは考えていて。映画業界の間口って狭かったりするし、それが関西で就職ってなると余計に。
今は、映画会社の支社がもう各地区に無くなってきている状態が業界の中であります。東京だったら本社やテレビ局とか、結構細分化されて会社もいっぱいあるのですが、関西だとどうしたらいいか分からないというのがありました。就職サイトで「映画」っていうキーワードを入れて、ヒットしたものを片っ端から見ていって、その中で日宣が募集をかけていました。僕はその時すでに一番やりたい仕事は映画の宣伝だったのですが、その段階では日宣という会社が映画の仕事をやっているということしか分からなくて。宣伝をさせてもらえるのかもわからないまま応募してみたら、偶然宣伝の業務があって、採用されてしかも第一希望だった宣伝の仕事をさせていただいているという状況です。
就活はあまりしなかったとのことですが、大学4回生の時に色々調べられたんですか?
4回生の時はほぼなんにもしていませんでした。あと僕は大学を5回生までやって、そのあと1年フリーターもやっていたんです。その時から何の仕事に就けばいいのかなって考えて。やりたいことはもちろんあったんですけど、なんの仕事に就いたらいいのかなって頭で考えた時に、やっぱり映画のことをやりたいなって思って。フリーターの時から探し出して、日宣に入る前に別の会社に1回就職して、転職して今に至るという感じですね。
最初に就職した会社も広告代理店だったんですけど、コンサートなどを扱う会社でした。同じエンターテインメントとか、イベントっていうとこでは近いのかなって思って。いきなり映画は難しいから徐々に寄って行こうとしました。
学生時代にはどれくらい映画を観られていたんですか?
大学生なんですよね、僕が映画に興味を持ったのは。僕は鳥取県出身で、ド田舎すぎてスタバだけじゃなくて映画館も少なくて。レンタル店も車がないと行けないような所にしかないという環境でした。大学進学のタイミングで大阪に来て、そこまで映画に興味があったわけではなかったんですが映画館でバイトを始めて。まあバイトの特典ってタダで観られる事だから、そこで年間100本近く・・・ほぼタダなんですけど、観てましたね。
人との関係構築で大切なこととは。
学生時代にやってて、今役に立っていることってありますか?
これはね、僕がリア充みたいに色々手を出していたらまた変わってたかもしれないんですけど、非リアだったんでね・・(笑)サークルとかもやってなかったし。でも、今に繋がっているのは映画館のバイトをやっていたことです。映画の知識もバイトを始めて興味を持って吸収しようと思ったし。あと接客はやっぱりやっていてよかったですね。礼儀っていうのは大事なものですから。
逆にしておけばよかったことって何かありますか?
もっと好奇心は持たなきゃダメだったね。誘いとか来ても結構、「うーん」ってなるタイプではあったので。まあ嫌なものは行く必要はないと思うんですけど、ちょっと興味を持つ努力をした方が良かったかなと思います。
色んな人に会って、交渉して、っていう映画の宣伝の中で、僕が皆さん(チア部)にお願いするようなパブリシティ(※映画チア部は昨年の『カノン』雑賀監督インタビューの時から日宣さんからイベントなどの取材のご依頼をいただいています)は、お金が発生しないんです。お金っていう武器は仕事の上で絶対的なものだと僕は思っているので、それがない中で、やってもらえるかどうかというのは本当にその人との関係性や、人となりが重要だと思います。宣伝をやるようになって、いろんな能力が欠如してるなと。それが働くようになるまでに少しでも補えるのがやっぱり学生時代なのかなって。好奇心を持たないと知識もやっぱり偏ってくるし、人見知りになっているんだなって思います。
私も知らない人とお話しするとき、いつも天気の話くらいしか思いつかなくて。
僕も今、すごく悩んでいて、知らない人と会話する時に全然話題が出てこないんですね。でも、さっきの話みたいになんでも好奇心を持って、疑問を持つというか、相手の何気ない一言に「え、なんでそうなんですか?」とリアクションしたり。僕は結構それを自分の中で勝手に咀嚼して、じゃあ次どうぞってなっちゃうので、話が続かないんですね。それを、「それどういうことですか?」「なんでですか」って聞いていくと、人って自分の話を掘り下げられると、楽しくなってどんどん話す生き物だと思うんです。その人自身に対してもそうだし、その人の言うことに、自分は興味を持ってますよっていう姿勢を見せて、本当に興味も持って、若くない人ももちろんそうなんですけど、分からないことは分からないですって、言っちゃう勇気は大事かなって。特に新人ってそういうの言える立場だと思うので。若い人は恥ずかしがらずに、「全然分からないですそれ、教えてください」って言える勇気を僕は持った方がいいんじゃないかなって思います。
映画宣伝をされていて、一番楽しい時、やりがいを感じるってなんですか?
自分の考えが形になることが本当に偶然あったりするんですよね。もちろん、映画の紹介をお願いして、実際に色んな媒体で紹介をしてもらえるってなることが僕らの仕事の中で一番重要なことだと思うので、一番嬉しいことなんですけど。媒体さんに向けて試写をして、良かったと言ってもらって記事にしてもらってというのも。でも、これってルーティーンとまでは言いませんが、ある程度流れが決まっていて、映画宣伝のベーシックな仕事ではあるんです。それを形式立ってないところに、自分の工夫で映画の情報が入った時は嬉しいですね。
例えばニュースなどのお堅い番組で、映画というエンタメを取り上げてくれることはなかなか無いことじゃないですか。だからインタビューにしても、この映画だから、いつもはやってもらえないけどいけるかもしれないって持っていって、「いつも映画なんてやらないけど、この題材だったらうちで取り上げられそうだから、ちょっと練ってみようか」ってなって、「こんな素材も出せるし、こんな風な切り口にしたらいいんじゃないですか」って話して。そうして実際に取り上げられると他の配給のひとたちからも「あれってどういう流れでやったの、いつも出ないのによくやったね。」って言われたりするので、そういう時は特に嬉しいなと思いますね。
ちなみに何の作品の時に、そういうことを実感しましたか?
2015年に『ターミネーター:新起動 ジェニシス』というシュワちゃんが久しぶりに出た映画があって、僕が関西の宣伝のパブリシティをやっていたんです。そんな中で東京にシュワちゃんが来るってなって、大阪の媒体も取材時間取れるから入れ込んでって東京から言われたんですね。
大阪の媒体ではあるけど全国ネットの番組っていくつかあって、その中に土曜日の朝にやってる『サタデープラス』っていう番組があるんです。出演者は関ジャニ∞の丸山隆平さん、小堺一機さん、小島瑠璃子さんで、『サタデープラス』は関西で作ってるから交渉をしに行きました。でもいくらシュワちゃんとはいえ、そこで洋画をどう取り上げてもらおうかって考えた時に、あの番組のテーマって、「健康とお金」なんですよ。シュワちゃんって、今でこそ俳優ですけど昔はボディービルダーのチャンピオンだったんです。「映画の公開日の特集ってなんですか?」って担当の方に聞いたら、ちょうどダイエット特集で。企画としてタレントの木本さんにライザップをやってもらって、その特集ですと。ライザップってすごいムキムキになるから、トレーニングのこととかを、ボディービルダーの元チャンピオンであるシュワちゃんに聞けたら、面白くないですか?って聞いたら、それはありかもっていう話になって。
それで、ありがたいことにスタッフの方がインタビューで映画のことを聞いてくださるタレントさんを用意してくれて。テレビに出てる方って、やっぱりインタビューが上手で、取材を受ける方も楽しくしてくれるので、そういう人たちが来てくれたらこっちも嬉しいし、木本さんって全国区なので、東京の方も木本さんが来てくれるってなったらすごい喜んでくれるし。木本さんが「今僕も鍛えてるんですけど触ってください」とか、「そんなん聞いていい?」って言われたんですけど、まあ聞いちゃいましょうって話して。大阪チームとしても鼻が高かったりするんですよね、うちは木本さん連れてきましたよ!って。
『サタデープラス』ってどんな映画でも取り扱ってくれるような番組ではないんですけど、偶然ダイエット特集の日にたまたまトレーニングをすごくしているシュワちゃんが来るから企画をハメられたっていうことがありました。あれも他の配給さんから、よくハメにいったねって。シュワちゃん来るから、トレーニングと絡めてダイエットの特集やりましょうって持って行ったの?と聞かれたりとか。今度はそこまで思いついて、番組に企画として出すくらいのことを僕がやらなきゃダメだなって思いましたね。
その企画はやっぱり影響は大きかったですか?人気シリーズの最新作ということで、元々のファン、観客になりうる人はけっこういらっしゃったとは思うんですけど。
広告や宣伝が難しいのはやはりどれくらい効果があったかっていうのが正直分からなかったりすることです。でもあれについては意味はあったのかなって。大阪でやったことだけど、全国規模の宣伝にはなったんです。東京はもちろんだけど、他の地方の宣伝チームも喜ぶし。大阪さんが入れてくれたから目に触れましたよ!って。
宣伝していて身近に影響を感じることってあります?
僕がやった企画じゃないんですけど、同じく『ターミネーター:新起動 ジェニシス』で、文楽とコラボをしたポスターを作ったんです。するとTwitterですごくバズったんですよ。なんだこれは!?みたいなツイートが多くて。駅とかに貼ってもらえたり、新聞に出してもらったりとか。文楽の方でも「これ面白いから」って持っている媒体にも出してくれたし。駅のビジョンとかにも出してもらったし。テレビにも取り上げられたかな、いくつか。これは一個の施策としてすごい周りに広がって行ったなっていうのは感じました。
難しいですよね。言葉なのか、ぱっと見のビジュアルなのか。
今はよく言われるのは、ツイッターよりもインスタをなんとかしろって言われたりしますけど。なんとかはしたいよ!って(笑)
映画宣伝における メディアの存在
映画の公式Instagramで「これ!」っていうのは確かにない気がします。
『貞子vs伽倻子』は面白かったですね。まああれは東京ですけど。洋画でよくやってたのは、主人公になりきって投稿するっていうやつです。『スター・トレック』だったらスポックになりきって随時情報とかも含めて投稿して、メッセージが来たらスポックになりきって返信したり。あれはすごく面白かったですね。
日宣さんが今関西の宣伝を担当している映画『心が叫びたがってるんだ。』って、もともとアニメだったじゃないですか。その実写映画を宣伝する上で意識されることってありますか?
アニメと実写の違いっていうのはやっぱりあると思って、まずキャストのイメージが付くっていうのはあって、今回でいうと主演の中島健人さん。ジャニーズっていう絶対的なブランドがあって、もちろんそこを意識しないわけにはいかないです。でもアニメ版が高い評価を得ていて、興行的にも『ここさけ』は成功したと言われているので、それがあった上の実写なのでジャニーズが出ているからって「ジャニーズが出てます!キラキラしてます!」それだけで推すとアニメ版のファンは、アンチまでは行かないけど、やっぱり自分たちの『ここさけ』はそうじゃないとなる可能性もある。アニメ版のファンも大事にしつつ、たくさんの人にご覧いただけるように、基本ですが宣伝文句とか、そういったところで引きつけないといけないし。
もちろん中島健人さんは演技も上手なんですが、でも新たな客層を取り込むためには、中島健人さんだったり、E-girlsの石井杏奈さんだったり、そういう方の持っている力を使うというのも1つの方法としてはあるわけです。広げたいがために起用してるっていうのもあるので、新しい客層に広げていく努力が必要です。アニメ版ファンの方ももちろん大切にして、そこは確実に来ていただきつつ、『ここさけ』を知らなかった人や、アニメだからと観てなかった人、全然知らないけど中島くんが出ているならと観に行ってくれる人、そういった広げたい部分に届くようなことができるかっていうことを意識しなきゃいけないのかなって。それは紹介してほしいテレビ番組やCM1つにしてもアニメと実写では、入れられる番組・入れたい番組・入れるべき番組も違ったりしますし。
『心が叫びたがってるんだ。』はTwitterで #ここさけアンバサダー っていうハッシュタグ企画をされていると思うんですけど、あれについて教えていただけますか?
インフルエンサーになりそうな人たちに、『ここさけ』の応援をしてもらうっていう企画ですね、 #ここさけアンバサダー ってハッシュタグを付けてもらって、「試写会行きました!」とか映画の感想を呟いてもらったり。今回の場合ティーンとか、「F1」と呼ばれる若い女性層をメインターゲットとしていきたい映画なので、どうしたらその層に情報が行き届くか考えた時に新聞などの紙媒体はちょっと弱いかなって思います。ファッション誌とかになるとまた別かもしれないですけど。そういう人たちが普段使っているのって、スマホでありやっぱりSNSなんじゃないかって。
読者モデルの方とかターゲットにとってインフルエンサーになりそうな人たちにアンバサダーになっていただいて、情報発信してもらうという。
洋画の宣伝でも日本ではこの人をインフルエンサーにしようとなることもあります。どれだけ意味があるかってはっきり見えなかったりするんですけど、施策としてこの映画ではこの方向性がベストだと判断して、それを信じてやっていくしかないんです。効果がどれだけあったっていうのも数値とかお金で出たら一番いいんですけど、出るわけではないので1度決めたらブレずにやっていくのが大事なのかなって思います。
私はInstagramの方がインフルエンサーみたいな人がいっぱいいるイメージなんですけど、だからこそ先の話にも出たようにInstagramでも有効な宣伝が出来ないと、ということですよね。
今までの新聞やテレビだけじゃなくて、web、特にSNSっていうのは業界全体で勉強していかないといけないジャンルではあるかなって思います。インスタでも有名な方に自社のカバンとか時計とか商品をアップしてくださいってお渡ししてる企業もいっぱいあるし。
そのほかにも日宣さんが関西宣伝を担当されている作品の1つで、7月29日(土)公開の『ファウンダー ハンバーガー帝国のヒミツ』は『心が叫びたがってるんだ。』よりは年齢層が上の方がターゲットなのかなと思うんですけど、その方に達に一番通じる宣伝方法ってなんでしょうか?
宣伝してもらえる媒体ってテレビ・新聞・ラジオ・web・SNSと色々あって、例えば『心が叫びたがってるんだ。』であればジャニーズさんが出ている番組とかバラエティーとか。どっちかといえば早朝よりも深夜に入れたい。若い世代に向けては。でも『ファウンダー』は、結構逆かなって思っていて、バラエティーよりはニュース番組を見る方が見てくださるのかなと。深夜か早朝でいうなら早朝の方がもしかしたら合っているのかもしれない。ニュース番組でも、ワイドショーっていうよりは報道番組を見る方の方が『ファウンダー』っていうのは刺さるんじゃないかな。
その映画のターゲットはどこかっていうのをはっきりさせて宣伝方法や媒体を決めて、『心が叫びたがってるんだ。』だったらビジュアルで見せてもいいし、「泣けます」って見せるのかもしれないし。『ファウンダー』であれば「ビジネス界の〇〇が〜」って言ってもいいし、ザ・マクドナルド!を打ち出してマクドナルド好きな人に見せてもいいし。
この作品はちなみにマクドナルドのタイアップとかはなかったんですか?
これはね、多分できない。マクドナルドはもともとマクドナルド兄弟っていう兄弟が初めて、映画の主人公であるレイ・クロック(マイケル・キートン)が偶然そのお店を見つけて、注文してから30秒で出てくるっていうシステムを全国に広めたら儲かるって言って全国にどんどん広めていって、いろいろあって最終的には経営権奪おうっていう話なんです。
でもこの人(主人公)は感覚的には面白くて、最初にマクドナルドのお店に行った時に店内を全部見てるんですよ、この人。だからマクドナルドのフランチャイズでも名前を変えてできるんですよ。でも、「マクドナルド」っていう名前にこだわって、マクドナルドの名前も経営権もいくらかかっても全部買おうとする。だからマクドナルド兄弟は「何でそこまでするんだ」って言ったら、同じことをやっても成功しないと。なぜかというと名前がすごく重要だから。マクドナルドって下品でもないし上品でもないし何よりアメリカっぽいって。マクドナルドという響きがあるからこそのマクドナルドなんだって言ってて、なんかすげえなって思いました。
この作品は、ニュース番組に取り上げてもらいやすい題材ではある。偉人として取り上げてもらったり、ビジネスの番組であれば、この人を題材にビジネスを掘り下げてもらいましょうってできるかもしれないし、新聞にも出せるかもしれない。ビジネスマンに観て欲しいって思っているんですけど、今起業しようとしている人とか、それこそ就活生とか観ても勉強になると思います。そういう特集を組もうとしてる媒体は目ざとく嗅ぎつけて、今度この企画入れてみません?ってやったりしていますね。
集客と広告コミュニケーション
日宣さんで新しく採用を戸羽さんがされるとしたらどんな素質を持った人が欲しいですか?
楽しそうに生活してる人かな。僕がどっちかというと苦しそうにしちゃうタイプで、ネガティブで用心深くて、細かくて結構陰湿なので、そういう所を武器にしてる人がいるとどうしてもぶつかるのかなって。それなら逆のものを武器にしてる人が来た方が、相互関係ができるのかなって。ポジティブで、僕より本当に好奇心がある人、努力して好奇心持とうとしている人じゃなくて。その方が補えるのかなって思ったりしますね。あとは、仕事が仕事なんで映画は好きな方がいいかなと。好きじゃない人なりの意見があっても面白いかもしれないですけど。映画が好きで、なおかつ作品として観ずに商品として観る人がいてもそれはそれで新しいかなと思います。
それでヒットしたらそれで正解ですもんね。
だと思いますね。すごくお客さんが入ってるけど、なんでだろう、分からんって言うだけじゃなくて、なんでこの映画にこんなに入ってるんだろうって考えることは大事かな。自分は全然面白いとは思わなかったけど、でも入ってる、なんでだろうって、追求していく必要があるのかなあ、と思ったりしてます。
ネガティブな話題になるかもしれませんが、日宣さんも扱われている『ハクソー・リッジ』の宣伝イベントでダチョウ倶楽部さんと野呂佳代さんが登壇されて、その内容が批判を浴びました。日本の、特に洋画における宣伝において「映画のことを考えていない」「映画ファンをないがしろにしている」と言われることも多いじゃないですか。
特にTwitterなどはどうしてもネガティブな話題の方が広がりやすいので批判が集中するというのはあると思いますが、そういう状況についてはどう思っていますか?
この宣伝はどうなんだろうって言われるのは仕方ないかなとは思いますけどね…。ちなみに、あのイベント企画をやったのは東京の会社なので、分からないところもありますが。
『ハクソー・リッジ』は沖縄戦を題材にして、僕も実際に観て圧倒されて。いわゆる重い題材の映画を、まあ言えば茶化して宣伝してるっていうのは、特に映画の内容を知ってる人からすると、どうなんだろうっていう批判も納得できるんですけど…。
でも宣伝して、広げなきゃだめな者としては、やっぱり今映画業界は斜陽というか、映画人口ってなかなか増えないっていうのがあって。あの作品はアカデミー賞も絡んでて、映画好きな人は評価も高くて観てくれると思うんですけど、でもそこの範囲でどれだけ稼げるかってなった時に、やっぱり観客層を広げざるをえないっていうのがあって。広げるためにはどうしたらいいかっていうと、まあ安直ではあるんですけど、ああいったイベントを企画して。もちろんイベントの内容だけ出ても困るんだけど、そこに映画の予告が出るのであれば、それは宣伝方法としてはやり方の一つではあるんで。
洋画って特にナマモノではないんです。うちも宣伝した『結婚』など、邦画であればキャストや監督の方が来てくれて、媒体さんも呼んで直接取材してもらえるしやりやすい部分もあるんですけど。洋画は監督や出演者の方が来てくださることが難しい。『ハクソー・リッジ』に関しては監督やキャストの来日は基本的にできなかったんです。じゃあ取り上げてもらう時にどうしたらいいのか。沖縄戦で、スケールがすごくて、こんなに悲惨な状況でしたっていう、そういう題材を取り上げられる番組が取り上げてくれたらもちろんそれが一番いい、っていうのは東京の方も納得してる。
でも、取り上げられないのが一番怖いってなった時に、とりあえず欲しいところから狙って行って、落とし所っていう言い方はあんまりよくないですけど。なるべく特集は組んでもらえるようにする。
じゃあ次に間口を広げる、もうちょっと違う層に映画を観てもらうにはどうしたらいいのか。そこでイベントを企画して。ダチョウ倶楽部さんってイベントの中ではテッパンの方々なんです。絶対楽しいんで。協力してもらって、映画の宣伝をしたっていうところですかね。致し方ないとは思うんです。やり方があれでよかったのかっていうのは、毎回やってみて、本当に正解がわからないのがありますね。
洋画の宣伝を過去にやった時も、同じように例えば『ターミネーター』だって、とにかく明るい安村さんを使ったし、『ミッション・イン・ポッシブル』はじゅんいちダビットソンさん、『トランスフォーマー』ならミサイルマン(ミサイルマン岩部)さんだったし。だから、あの企画への批判というのは真摯に受け止めないといけないんですけど、取り上げられないのが1番怖いというのは事実です。
僕らは東京の本社から任されているし、東京なら洋画の場合本国から任されている。ヒットさせなきゃダメ。で、ヒットする・しないはもちろんあるんですけど、僕らはこれだけのことをやりましたって見せるのも仕事では大事なことなのかなって。やる企画はもちろん効果があると思ってやってます。それがネガティブな意見でも広がればいいって僕は言うつもりはないですが。
ネガティブな話題ではありますけど、広まったのは事実としてはありますもんね。
難しいんですけどね。どう思うのかって言われて、そんなこと言われてもっていうのが一番正直なところなんですけど。そこで止まっててもダメなので。
例えば『ハクソー・リッジ』の公開が8月なら終戦の月だから媒体として散る上げやすかったかもしれないし、公開する映画館の系列が違うともうちょっと映画ファンにコミットした宣伝になっていたかもしれない。
そうですね。終戦の日であれば終戦の特集がテレビや新聞で組まれるので、そこにハメていけるのかなと思うし、実際に以前宣伝担当した『日本の一番長い日』は、終戦の日に絡めてABCテレビの『ビーバップ!ハイヒール』という番組で「教科書では知られてない第二次世界大戦の英雄」という形でガッツリやってもらったこともあったから、そういうやり方もあったとは思います。公開日に関しては沖縄慰霊の日に合わせたということだと思います(公開日は6月24日(土)で、沖縄慰霊の日は6月23日(金))。
『日本の一番長い日』のように出来たら、最初の方に話した普段は取り上げてもらえない所で自分が考えたもので取り上げてくれたっていう大きな喜びにはなるのかな。それを、毎作毎作と、どこにどういう企画で当てるのかっていうのを作品の情報が出た段階で考えて、当たっていかなきゃダメなんですけどね。
コミュニケーション能力と仕事
就職活動をされてるときに、自分の強みとかってどうやって話されました?
自分が就職活動をしていた時っていうのは覚えてないんですが・・・。今求められているものはコミュニケーション能力だったり、明るさとかそういうワードが企業受けするって教えられてるのかなっていうくらいみんな「コミュニケーション能力が〜」って言うんですよね。まあ、でも正直代わり映えしないのかなって。本当に得意って思ってたらいいんですけどね。
もちろんコミュニケーション能力なり明るさなり身につけるのも大事だと思います。あるならあるってアピールしとかないと。ないですっていうのはマイナスだと思うから。それを本当にこの子はコミュニケーション能力あるんだなって思わせる裏付けみたいなのがつけられたらいいですよね。
コミュニケーション能力については、経験値や自分の持ってる情報量とか、それを引き出せる器用さも無いと。僕は引っ張り出すのが苦手です。情報量は多分あるほうだと思ってるんですけど。後は、人の話は聞くことかな。しっかり聞いとかないと返せないと思います。
人と人のやり取りって、それがもしお金が入ってくるやり取りだとしても、同じ金額でもこの人だったらここまでやりたいなって思うし、この人だったら正直ここまでしかできないなっていうのはあるし、差は出てくる世界だったりするので
映画チア部も「この人とだったらここまでやりたいな」と思っていただける存在になれるように頑張ります!!
いかがでしたか?
現代の映画の広告コミュニケーションはいろいろな手法が取られており、奇抜なものも目にしますが、たくさんの人に知ってもらうため、普段からたくさん好奇心を持ったり、広い視点を持って生活することを心がけているからこそ、目を引く宣伝手法が生まれているのだろうなと思いました。映画を見たときに、その作品ではどんな風な広告コミュニケーションが取られているか、もっと観察してみようと思いました。今回お話の中に出てきた作品も、どんな作品なのか気になるので、是非劇場に足を運んでみようと思います!
また、コミュニケーション能力についても、確かに自分の知っていることを掘り下げられたら喜んで話してしまうなあ…と思いました。学生の間にいろいろな方とコミュニケーションをとって、もっともっと経験値を積んでいきたいです!
ありがとうございました!(まゆ)
記事内に出てきた
7月22日(土)公開『心が叫びたがってるんだ。』予告編
〈ストーリー〉
高校3年の坂上拓実は、「地域ふれあい交流会」の実行委員に任命されてしまう。一緒に任命されたのは、他人とおしゃべりが出来ない少女・成瀬順。彼女は幼い頃自分の一言で両親が離婚してしまい、それ以来誰にも心を開かなくなっていた。そのほか、優等生の仁藤菜月、野球部の元エース田崎大樹が選ばれた。実は拓実と菜月は元恋人で、2人は自然消滅し、そのまま気持ちを確認できずにいた。
担任の思惑で“ふれ交”の出し物がミュージカルに決定。「ミュージカルは奇跡が起こる」という一言に興味を持った順が詩を書き、拓実が曲をつけることになる。順は拓実の優しさに好意を寄せるようになり、そのやりとりに菜月は自分の想いを諦め、2人を応援することに。そして、夢を追う順の姿に大樹は好意を寄せ始める。目の前の人に好きと言えず、すれ違う4人。そして舞台当日、「やっぱり歌えない」と順は消えてしまい、拓実は順を探しに行く。しかし、舞台は主役不在のまま幕を開け… 。(公式ホームページより)
7月29日(土)公開『ファウンダー ハンバーガー帝国のヒミツ』予告編
〈ストーリー〉
1954年アメリカ。52歳のレイ・クロックは、シェイクミキサーのセールスマンとして中西部を回っていた。ある日、ドライブインレストランから8台ものオーダーが入る。どんな店なのか興味を抱き向かうと、そこにはディック&マック兄弟が経営するハンバーガー店<マクドナルド>があった。合理的な流れ作業の“スピード・サービス・システム”や、コスト削減・高品質という革新的なコンセプトに勝機を見出したレイは、壮大なフランチャイズビジネスを思いつき、兄弟を説得し、契約を交わす。次々にフランチャイズ化を成功させていくが、利益を追求するレイと、兄弟との関係は急速に悪化。やがてレイは、自分だけのハンバーガー帝国を創るために、兄弟との全面対決へと突き進んでいくーー。(公式ホームページより)
PROFILE
株式会社 日宣 戸羽 大吾さん
関西で角川映画などの映画宣伝に携わる。
株式会社 日宣ホームページ
http://www.nissen-ad.com/index.php
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