品田誠特集‐品田誠ってどんな人?【完全版】vol.2
品田誠特集vol.1で、
品田さんが俳優を目指し、監督をするようになった経緯を知ることができました。
続くvol.2では、彼について、もう少し立ち入った質問をしてみました。
【“―”チア部(質問)/“品:”品田誠】
ー監督作『不感症になっていくこれからの僕らについて』では、シンガーソングライターの主人公が印象的だったんですけど。品田さんは普段どういった音楽を聴いていますか?
品:実は大学でバンドをしていたこともあったんですが、それで挫折を味わったというか。挫折するまでもなく、周りには音楽がすごく好きで、すごくうまい人がたくさんいて、僕はそこまでじゃないなってなって。
それであまり聴かなくなっちゃったというか、最近は歌詞のない歌を聴きますね。バッハとかそういう歌のない音楽を聴きながら電車に乗るのが楽しいです。
ークラッシックですね。日常にクラッシック音楽が合うんですね!
品:はい。よかったら、是非!
ーそれと、『不感症になっていくこれからの僕らについて』の主人公はどのように選ばれたのですか?
品:今回神戸の方でも上映する『なけもしないくせに』で、彼と共演して交流があったんです。脚本を書いているときに、もう2か月後には完成させなきゃいけないような状態で、すごく短いスパンの中で映画を完成させなきゃいけない状況で、何を思ったのか、自分では演じられないようなシンガーソングライターの役を書いたんです。
歌手の人に頼もうかなと思っていたんですけど、ツイッターかなんかで「今度新作撮ります」みたいなことをつぶやいたら、池田くんからメッセージが来ていて、その時に彼が楽器を演奏できることを思い出して。彼は昔音楽をやっていて、海外をひとりで放浪して、不思議な楽器をやっていたんです。
彼に「ギター弾けますか」って聞いたら、「最近バンドやってるんです」っていう返答が来て。バンドではキーボードボーカルをしているんですけど、ギターも弾けるよと言われて、スケジュールも大丈夫だったので、彼に決めました。
曲も作ってくれて、本当に協力的なパートナーでした。そこから脚本の変更もありました。0から役者を探さなくていいし、彼とは共演したこともあるって、(彼という人間について)ある程度知っていたので、メリットが多かったです。
ー今後歌手とかアーティストとコラボする予定はありますか?
品:予定はないですけど、登場人物が歌ったりしている映画がすごく好きで、そういうのもやりたくて、自分の映画でも歌わせたいです。
ー引き続き『不感症になっていくこれからの僕らについて』の質問なんですが、かつて品田さんは、現在は情報消費社会になっているというコメントをしていて、品田さんが考える、現代の情報処理社会におけるに映画の果たす役割は何でしょうか。。
品:ちょうど元町映画館のホームページを見て感動したんですけど、「パンだけではなく、バラが必要だ。」というコメントが載っていたんですが、それにすごく共感しました。
今はゆっくり人生を振り返ったり、考えたりする時間は不要だと感じてしまうくらい忙しく過ごしていて、東京にいるとまたそれに拍車がかかっているのかもしれないんですけど。常に何かが動いている状況にいるというか。ですので、映画館で映画を観ることは、時間が拘束されるわけですし、それに映画は暗闇の中で観るものなので、日常ではあまり体験しないことです。スマホで何でも調べられたりできるとか、今はいろんなことがすぐにできる時代です。その便利さを享受している一方で、不便さも必要だと思います。
例えばお家で映画を観る時に、何かあったらすぐに連絡できる便利さはあるんですが、劇場で映画を観るのはそういったことが出いなくなるという意味では不便になるという事になります。そういう不便さがすごく必要だなと思います。今は一人一人が、たとえば音楽でも、アルバムを聴かなくても、好きなものを1曲だけダウンロードして聞くとか、映画でも、配信で自分の好きなものだけを選んで観たりできると思うんですけど、劇場っていうのは、もちろん好きなものを選んで観ているんですけど、知らない人が隣で一緒に観ることだったりとか、劇場に実際に行って色々予告編やチラシを観て次の行動が決まったりだとか、そういう、場所の偶然性、映画館は、個人個人が何でもできる時に人が集まる場所として、映画館で観る体験って、家で観るよりもワクワクします。
誰かが「読書なんて非効率で無駄だ」って言っていたんですけど、それは今の時代に生まれたある種の考え方だと思うんです。そういう風に考えている人は結構いるんじゃないかと思って。非効率だからやるだけ無駄だっていう考えって、それこそYouTubeで今2~3分の動画でも長いって言われるようになっていて、人によっては分からない映画なんて見る価値ないって思っている人もいます。
そういう考え方はもしかしたら多数を占めている考えかもしれないんですけど、分からない中でも、その豊かさにふれること、そういったものがあるっていう、その火(その存在そのもの)を消しちゃいけないという思います。
ー『不感症になっていくこれからの僕らについて』で、人間らしさとは何かを問うていきたいという品田さん自身のコメントあったんですが、先ほど言っていたような、不便さの中に人間らしさが存在する、という風に考えているんでしょうか。
品:そうだと思います。
今は分かりやすさが求められる時代で、でも物事って、ネットで調べてウイキペディアでも正解は載ってるのかもしれないですけど、自分の感覚を通じてでしかわからない事だったり、自分が想像を巡らせないと分からない事だったり、たくさんあると思います。自分のこともそうだし、ネットに自分のことは書いてないので。
人は世界をみる時に必ず自分のもっている色眼鏡を通してでしか世界をみることができません。例えば、違う国の映画を観て違う哲学で生きている人たちの考え方にふれたり、大げさかもしれないんですけど、映画は自分の世界を変えれるようなものだと思っていまして、世界の変え方っていうのを映画だったり、読書だったり、音楽だったり、人によって違うと思うんですけど。
即効性があるものじゃなくて、地層みたいにちょっとずつ、でも確実に積み重なっていくことを大事にしていきたいんですけど、でも大事にされていない感覚もあって、今は自己啓発本とか、ちょっとずつじゃなくて、即効性があって一気に考え方を変えるようなものも存在していて、意外と積み重なっていくようなものじゃなかったりするような気もしてて…自分は即効性のあるパワフルなものに疑いを持つべきというか。食べ物でも、すごくおいしく感じるものの中には、添加物が多く含まれていて刺激になるものが多いじゃないですか。それで舌が刺激の強いものになれちゃって、やさしい味が分からなくなっちゃう。
自分の感じ方を、大事にすべきなんじゃないかとおもって。自分もこれから忙しくなって、(即効性を求めてしまうかもせれないので、)この映画を撮って、そうならないようにしたいという理由もありました。
ーでは、忙しい中でも、即効性のあるものを求めるんじゃなくて、自分のちょっとした積み重ねを大事にしていきたいという事なんですね。
品:そうですね。さっきまでエナジードリンク飲んでた人が言うのもなんですが(笑)。即効性を求めてしまう時もあるので、その中でも、その考え方を大事にしていきたいというか。即効性のあるものを否定するのではなく、自分の大事にしているものをちゃんと持っておきたいです。
長文になってしまうくらい、
品田さんは(口調は落ち着いていたものの)熱く語ってくれました!
日々たくさんのことを考えながら、芝居・監督をしていることがよく分かります。
ー品田さんは、「こういう話を作りたいから、こういう役を作る」のか、「こういう役を作りたいから、こういう話を作るのか」、どっちですか?
品:話からですね。最初は役者も監督も両方やっていたんですけど、最近は(監督をする時は)もう完全に監督だけをしてて、人を演出する楽しさを最近覚えてきています。
ー監督作の『DEAR』で、すごく気になったのが、ヒロインと、登場する男性の年齢も、関係もはっきりしていなくて、それが気になりました。
品:あえてあいまいにした部分はあります。
短編は長編とは違って、1ヵ所を撮っているというか、それ以外の部分、氷山の一角の下の部分は、観た人にゆだねたいなと思っていて。人によって受け取り方が違うのはすごくおもしろいなと思っていて。好きに受け取ってほしいなと思っています。
ー『DEAR』のヒロインの歯並びがすごく印象的で、「フランス女優みたいで、完璧じゃなくていい」というセリフも印象的でした。こういうセリフは、役者が決まってから変えてたりしているんですか?
品:あの映画に関しては、もともとこの女優でというオーダーがありまして。僕も彼女が出ている映画を観たことがあるんですけど、いろいろ調べていたら、あるイベントに彼女が出ていて、そのイベントの審査員の、彼女に対する総評の中にそのセリフがあったんです。それをそのまま使いました。
彼女は東京に上京しようかどうか悩んで、友達に相談して、背中押されてついにやってきましたっていう感じで、それに共感して自分の経験も連想して、生まれた映画だったりするので、役者さんからインスピレーションを頂いていることもあります。
ー品田さん自身の場合は、役者をやるために上京を決めた時に背中を押してくれた人は誰ですか?
品:両親でした。大学を辞めることはどちらかという親不孝な事だと思うので、要今日行きたいけどどうせ無理だろうなと思って、役者やりたいんだよな、みたいなことをぼそっと言ったら、思いがけず母に「あんたならそういうと思ってた」って言われて、そこで本気で上京を考えるようになりました。
ーそれまでは役者をやりたいという気持ちは、一切両親に伝えていなかったんですか?
品:直接言ったことはないと思います。北海道にいた時は地元のよくわからない劇団に入って(笑)、怪人の分身した時の役とかをやらせてもらっていたんですが、自分何やってるんだろうと思いながらやっていたんですけど、そういう話が耳に入っていて、「なんかやってるな」とは思われていたのかもしれません。
ーそういう役をやることも、オーディションを受けることも、一切言っていなかったんですか?
品:言ってなかったと思います。地元のキャスティング会社があって、それでCMに一回出たことがあるんですけど、それが結構シュールなCMで(笑)、その時に母親ももしかしたら周りから「なんかやってるぞ」という風に言われたのかもしれません。
ー出演作である『ただ・いま』についてなんですけど、登場人物のセルフがすごくナチュラルでアドリブみたいに感じたんですけど、実際あの映画でセリフはどれくらいありましたか?
品:あれほぼセリフなんですよ。アドリブは、どうでもいいとこの「えー」とか、それくらいなんです。うれしい感想ですね。そういう雰囲気を出したい映画だったので、監督さんも喜ぶと思います。
ードキュメンタリーのような映画でした。雰囲気も空気感もすごく自然な感じだったんですけど、役者さんは皆さん知り合いでしたか?
品:あれはほぼ初めましてでしたね。前日に打ち合わせで一回会ったりはしたんですけど。あの映画は、辻監督がルームシェアをしていて、一人一人の登場人物も、実在したモデルがいて、そのキャラクターをそれぞれ分割して当てはめていました。監督が一番近くで見ている人を基にしているので、、人物に厚みのある映画になったと思います。
ー品田さんは役者として出演した作品で、自分に一番近かったキャラクターって出会ったことはありますか?
品:役者をやるいちばんの楽しさは、自分の中の一面に気づくってことが結構ありまして。
あの(『ただ・いま』)映画監督の役、けっこうハイテンションで、ああいう一面はあると思います。すごく仲のいい友達といる時とか。
全部やっぱり自分の一面ではあるっていう気持ちになるんですけど、どれが一番近いかっていうと人によって環境によって出す一面ってやっぱ違うので。
こういう場でちゃんとしてる時とか(笑)、家にいる時とか。だからその時によってどの役に近いかは変わってくるというか、僕自身にいちばん近いかもっていうのは…わからないですね。どの役を自分にするかで、変わる気がします。
ー『ただ・いま』は喋ってるシーンが多く、間の取り方など、苦労したシーンはありますか?
品:基本的には誰かがずっと喋ってる時に、自分のセリフ言うのが遅れたりしたら全部崩れるというか、本当にアドリブなしでやってたので。
あの人数の芝居ってのはなかなかやらないので、ひたすら言葉が飛び交う、全シーンがそういうのって大変でしたね。
ーどんどん人が増えていきますもんね。
品:そうですね。一対一、二対一とかの方がやりやすいんですけど。
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