CO2助成監督ラストインタビュー!

(左から『食べられる男』近藤啓介監督、『見栄を張る』藤村明世監督、『私は兵器』三間旭浩監督。後ろが映画チア部こえた)


今回取材させていただいたCO2助成3作品はいずれも今年の大阪アジアン映画祭が世界初上映。学生に映画館で映画を観る喜びを伝えるべく活動している映画チア部として、最後に3人にそれぞれの「映画館」への想いを聞いてみました!


■「音」へのこだわり


こえた これまで皆さん短編なり長編なりを作って来られたと思うんですけど、今って映画館やテレビ以外でも動画サイトとか、映像作品を発表する場所っていっぱいあると思うんです。その中で敢えて映画館で上映されることを前提に映像作品を作っていらっしゃるというのは、特に20~30代の若手の監督さんなら何か強い想いがあるのかなと思ったのですが


三間 そうですね。僕もなるべく映画館で観るようにしたいと思ってて。映画館で観るっていうのは、もちろん画面のスケールもありますけど、やっぱり音が全く違うじゃないですか


こえた そうですね。『私は兵器』だと、音が終盤につれてどんどん不快になっていくじゃないですか。それはやっぱり映画館で観てほしいってことで?


三間 そうですね。音は今も調整中なんですけど、もっとスケールアップを目指してて、殴る音とか。それを完全な形で体験してもらうには、やっぱり映画館で観てもらいたくて。映像が1番大事で、音が2番目みたいに考えられがちですけど、音もめちゃくちゃ大事なんで。それを最大限で生かすためにはやっぱり映画館で上映してほしいし、自分自身も映画館で観たいっていうのがあるので


こえた それはやっぱりテレビとか、ネットとかでは迫力を再現できないものですか?少なくとも音に関して言えば


三間 そうですね、もし僕がテレビやネットで発表される映像作品を作るとしたら、それに合った作品を作るようにしますね。迫力で魅せるとかじゃなく、小さな画面で作れるものを作るって感じですかね


こえた 画面サイズとかも含めて、映画館で流すならこういう作品、テレビやネットで流すならこういう作品、というふうにきちんと分けて作るという感じですか?


三間 そうですね。もし自分が作るとすれば、ですね


■「映画館で映画を観る」ということ


こえた 藤村監督はどうですか?『見栄を張る』のHPを拝見した時に「映画館で上映できない場合は最悪有料配信も考えています」という文章を読んだんですが、でもやっぱり映画館で上映したいという思いはありましたか?


藤村 そうですね。パソコンとかでお家で観るのも気軽でいいと思うんですけど、映画を観る以外のことも出来ちゃうじゃないですか、家だと。それに比べて映画館に行くってめんどくさいじゃないですか?しかもそこに行ったら、90分から2時間ぐらい映画を観るしかできない。強制的に、色んな人と。なんかそういう空間って面白いなと思って。そこで大勢の人が一本の映画を観てるのって、やっぱいいなあって。だから映画館で観てほしいですね


こえた 確かにそうですよね。そもそも皆さんはもともと観客としてよく映画館に行かれるんですか?


近藤 そうですね

こえた なかなか映画館で映画を観る楽しみを自分たちと同世代の学生に伝えるのが難しいと感じていて。「DVDでいいじゃん」みたいな。近藤監督もやはり映画は映画館で?


近藤 そうですね。自分の映画は映画館で上映してほしいですね。けど、現実…どうしたらいいんでしょうかね(笑) 全く分からないですね(笑)


こえた それは本当にお聞きしたくて。どうすればいいのかな、っていう


近藤 だって、そんなに興味のない人だったら絶対観れるならスマホで観ますもんね。それはもうスマホで観られる時代になってしまったからだと思いますね。映画館に観客が帰ってくるのは難しいなあと思いますね。減っていくしかないのが現状。それを覚悟できるかってことだと思いますね、今の映画監督が


こえた まあ、そんな状況ではあるんですけど、それでも今の映画監督さんは最初に映画を作る時は映画館で上映する、っていうことを前提に作られてるものなんですか?後々DVD化されるとかは無視して、というか


近藤 それはそうでしょうね。皆そうだと思います。映画館で観て面白いものはDVDで観ても面白いので


こえた そうですね。先ほどと繰り返しになるんですけど、映画館で映画を観る大切さ、みたいなものを伝えるって本当に難しいなと思うんですけど、映画を作られている皆さんは何か観客に映画館の良さを伝えるために行動とかはされていますか?DVDではなく劇場で、っていうのは


近藤 レンタルショップ潰すしかないでしょうね、それは


こえた それしか無いですか、方法は(笑)


近藤 それしかないと思います(笑) あ、でも最近はDVDを出さない映画もありますけどね。『サウダーヂ』っていう映画とか。「空族」っていう映像集団が作った作品なんですけど。彼らの最新作である『バンコクナイツ』も多分出さないでしょうね、DVDは。そういう方法も今後出てくるでしょうね


こえた ちなみに近藤監督はご自身の『食べられる男』は今後DVD化の予定というのは?


近藤 それは全く分からないですね。出したいですけどね、DVD。レンタルショップで並んでるところ見たいですけどね

こえた 出したいんですか(笑) でもやっぱり、自分の作品はロードショーが終わった後も定期的に劇場で流してほしいっていうのはありますか?数年ごとでもいいから


近藤 それは絶対にそうですね。そういう思いはあります。2週間の上映とかがないと、観に行かないかなあとは思いますね


こえた そうですよね、確かに限定上映とかでもない限り観ようってならないかもしれないです。あの、少し話が変わるかもしれないんですけど、自分の作った作品をどんな世代の人に観てほしいとかっていうのはありますか?自分たちと同世代に観てほしいとか


三間 そうですねえ。いま、どんな人が観てくれるのかっていうのが全く分からないですよね。例えば自分の作品をおばあちゃんとかが観てどう思うのかなって(笑)


こえた おばあちゃんとかはちょっと厳しいかもしれないですね(笑)


三間 ゾッとするでしょうね(笑)出来れば老若男女に観てほしいっていうのはもちろんありますけど、まずは若い人たちに観てほしいというのはありますね


こえた ああ、やっぱりそうなんですね。『私は兵器』とかになると、監督のコメントにもあったように「この映画が今の日本の縮図になっていると思う」ということなんですけど、やっぱりそういう作品を作ったからには若い人たちに観てほしいっていう思いが?


三間 まあそうですね、あんまり自分の思想とかを押し付けるタイプではないですけど。これを観てどう思うかは観客の自由だし、それが楽しい所ではあると思うので。ただ、これはファンタジーじゃないよっていうのは。こういう世界もあり得るんだっていうのは描いたつもりなんで。そこを観てほしいかなっていうのはありますね


こえた 結局、どうなんですかね。ターゲット、観てほしい世代とかも含めて、1週間とか2週間限定上映になると映画ファンしか結局来ないっていう問題があると思うんですよね。映画館で映画を観るっていうのがもう一般的な娯楽じゃなくなってると思うので


近藤 まあ特にインディーズ映画は観に来ないでしょうねえ。ターゲットを狙うなら40歳以上じゃないですかね。映画館によく来る


藤村 いないですよね、映画館に若い人。単館系だと特に


近藤 だからやっぱみんな、原作物を撮って、やっていくしかないですよね


三間 売れてるやつに乗っかるみたいな(笑)


こえた 結論ですか(笑)




今では映画館でなくても映画を観られるのはもはや当たり前ですが、このインタビューを読んでいただいたら分かるようにやはり映画館でなければ再現できない映画の「迫力」があるのもまた事実。今回紹介した3作品も今後、他の映画祭への出品や一般公開に向けて動き出しているはずなので(三間監督は何やら『私は兵器』完全版に向けて動き出しているとか!)、ぜひとも要チェックしていただきたいです!


Profile

□近藤啓介

1993年大阪府生まれ。2011年大阪芸術大学芸術学部映像学科入学。共同監督した『小村は何故、真顔で涙を流したのか?』が第17回京都国際学生映画祭長編部門にてグランプリを受賞。今作が3本目の長編映画となる。『食べられる男』公式HPは コチラ


□藤村明世

1990年東京都生まれ。明治学院大学文学部芸術学科で映画学を専攻。

大学時代に制作した『彼は月へ行った』(14)が第36回ぴあフィルムフェスティバルや仙台短篇映画祭2014、第6回下北沢映画祭などで入選。今作は初の長編映画。『見栄を張る』公式Facebookは コチラ


□三間旭浩

1985年京都府生まれ。京都造形芸術大学映像舞台芸術科在学中に制作した『消え失せる骨』(08)がイメージフォーラム・フェスティバル2009で優秀賞を受賞。その後、東京藝術大学大学院映像研究科に進学。同大学修了制作の『ユートピアサウンズ』(12)は2013年に開催された第8回大阪アジアン映画祭などで上映された。『私は兵器』公式Facebookは コチラ


■映画チア部

2015年3月神戸・元町映画館を拠点に関西のミニシアターの魅力を伝えるべく結成された学生による映画宣伝隊。さまざまな活動を通して、ミニシアターの魅力を発信している。


(文字起こし・編集 こえた)

映画チア部

神戸・元町映画館を拠点に関西のミニシアターの魅力を伝えるべく結成された、学生による学生のための映画宣伝隊。